過去の実績

2009年度 第3弾 合同講演会

日時:2010年3月6日(土)13時~17時
定員:200名
締め切り:2009年2月26日(金)
受講料:同窓会会員無料、他500円
会場:北海道経済センター(8階Aホール)

テーマ 講師
「La boca secd 口の渇きを診る」
安彦善裕先生
(北海道医療大学個体差医療科学センター 歯学部門 口腔内科学系教授)
「高齢者の口腔ケアについて」
村松真澄先生
(札幌市立大学看護学部看護学科 老年看護学領域 講師)
「認知症患者に対する摂食嚥下臨床」
中山剛志先生
(杏林大学医学部付属病院リハビリテーション室/

脳卒中センター/摂食嚥下センター(兼務)主任)

先生からの回答!!

 

中山剛志先生からの回答

 

Q1「嚥下後の咳払いの意味は何ですか。かえって誤嚥を誘発しそうです」

A: 嚥下障害の多くの患者さんは、気管に食べ物が入って(誤嚥して)も咳が出ない、いわば「むせのない誤嚥」(不顕性誤嚥)をします。むせてないから誤嚥をし ていない、ということではありません。これがとても怖いのです。ですから、嚥下後に意識的に咳払いを行い、万が一誤嚥をしていても、誤嚥したものを喀出で きるようにします。

 

Q2「在宅でできる嚥下リハビリの方法を教えてください」

A:原則的には嚥下の専門家のアドバイスを受けながら、嚥下リハビリを行って下さい。嚥下に関する様々な書籍が出ていますが、患者さんや家族向けの本もいくつか出版されています。是非参考にしてみて下さい。

 

Q3 「きざみ食・ミキサー食を摂取するようになると、義歯の装着はしなくても良いのでしょうか。『ミキサー食だから入れ歯をしなくてもいい。』と、あるケア ワーカーさんが言っていた。義歯はあるけれども本当に不要なのか。噛む必要がないから義歯はいらないのか。咀嚼、嚥下のために本当は使うことが望ましいと 思うのですが」

A: 義歯には嚥下時の咽頭収縮力を高める効果があります。舌接触補助床も同様の効果があります。義歯がないと口腔の上下の空間が広くなり、嚥下時の舌口蓋接触 の圧が低下し、嚥下駆出力の低下を招き、嚥下後の咽頭残留の原因になります。しっかりした嚥下に義歯は必要です。ただしグラグラとした不安定な部分的な義 歯は、誤飲の元になりますので、必ず外して食事をするべきと考えます。

 

Q4「ICU患者で意識障害の強い人の評価はどのようにしていますか。傾眠であり指示も入りにくい患者さんの咽頭期の評価について、先生の病院でされている内容を教えていただきたいです」

A:原則的にはあまり突っ込んだ嚥下の評価を行わずに、口腔ケアや嚥下器官の他動運動訓練、TTSを行うに留めています(様々な意見があるところと考えます)。STでもできる範囲の評価としては口蓋咽頭反射のチェック(消失していれば嚥下反射惹起遅延の可能性あり)を実施します。口唇を水で何度か濡らしてみると、覚醒度アップに繋がることがあります。医師の観察の下、1㏄程度の冷水を咽頭腔に垂らして嚥下反射をみることもあります。気管切開をしているケースでは、誤嚥をしても吸引が容易なため、着色水テストを行うこともあります。

 

Q5「管理栄養士です。嚥下回診の具体的内容が知りたいです。食事形態の見直し等(きざみ、とろみをつける)を検討したりするのでしょうか。管理栄養士に求めることは何かありますか」

A: 当院の回診では、既に経口摂取をはじめている患者さんについても、食形態の変更(より常食に近い形に)が可能か、チェックをします。このとき管理栄養士の 方から、アドバイスを頂くこともあります。また、管理栄養士の方はすべての患者さんの食形態を把握しているので、極端な形の食形態の変更があった場合に、 それは本当に正しい変更のオーダーなのか、あるいは医師のオーダーミス等よくないことなのか、随時確認をしてくれます。回診は昼食時に行うので、その日の 嚥下食が嚥下食としてふさわしいものか、回診メンバーに聞いて、よりよい嚥下食を作るよう努力してくれています。当院の栄養士の方は、この1年で嚥下臨床 にとても熱心になってくれました。とても助かっています。

 

-村松真澄先生からの回答-

 

~村松先生より一言~

口腔ケアのエビデンスレベルは、まちまちです。患者さまの病態や口腔の環境は様々です。すべての方に同じ方法が当てはまることではないことを考慮していただき、患者さんに一番適した口腔ケアを提供できるように最新情報の収集をして批判的に判断していただきたいと思います。

 

Q1「臥床の患者さんは開口状態が多いですが、義歯ははずすのでしょうか。それとも入れておいたほうが良いでしょうか。はずす場合の時期(入院時など)はありますでしょうか」

A: 患者さまの病態によって違います。基本的に義歯は、座位で咬合を調整していますので仰臥位では、適合しないことが多いです。しかし、義歯を装着しなければ 唾液を嚥下ができない場合もありますのでよく観察することが必要です。義歯を装着しなければ咬合高径が低くなり、顎関節痛が出現することもあります。義歯 は、リハビリテーションの用具ですので他のリハビリテーション用具と同じで使わないと使えなくなります。看護上の問題で義歯をはずす必要がある場合もあり ます。たとえば、手術の時などです。その場合は、術後、意識の回復状態や呼吸状態など全身状態をチームで総合的に判断し、いつ義歯を装着できるか状況を見 極め、なるべく早く、義歯を装着し、義歯の適合が悪ければ、歯科と連携して歯科医師がティッシュコンディショニングをして義歯を適合させることです。入院 中から、義歯を使うことができ、退院してすぐに歯科で義歯調整できます。

 

Q2「難病のマウスピースについてもう少し詳しく教えてください。」

A:『ナーシングトゥデイ20091月号のP50-51』を参考にしてください。

 

Q3「認知症などによりまったく開口しない患者さん(ほぼ全歯残存している)にできる口腔ケアの仕方や用品などを教えてください。」

A:『ナーシングトゥデイ200910月号臨時増刊号』を参考にしてください。

 

Q4「口腔ケアを「12分くらいで終わるようにしてください。」と言ってましたが、その根拠をお教え下さい。」

A:「5分でできる口腔ケア介護のための普及型口腔ケアシステム」提唱者の角保徳先生は、歯みがきを入れて5分としています。アメリカでは、口から食べていない患者であれば、口腔が乾燥しないように2時間から4時間毎に口腔ケアをすします。粘膜ケアだけだと2分です。粘膜をきれいにして歯磨きをするときは、最低5分かかります。

 

Q5「家族への口腔ケアの指導を行う際に、マウスウォッシュやオーラルバランスは経済的な問題であまり使用できない。他に何か使ってできないかと質問されることがあります。その際、どのようなもので代用したら良いのか教えていただきたいと思います。」

A: 訪問看護師によると、頭頚部放射線治療後や唾液腺疾患など唾液が分泌しない、また、終末期で脱水気味にコントロールされていない、免疫低下がない患者など を除いては、口腔ケアが定着すると自分の唾液が出て口がきれいになり、マウスウォッシュなどを使わなくても口腔ケアができるようになるといいます。口腔乾 燥がなければ、普通に歯磨きをすれば、きれいになります。しかし、口腔乾燥がある場合は、保湿剤が入っていないときれいになりません。これは、アメリカの 看護のToward Healthy Agingにも書かれてあります。患者・家族に必要性と効果的に使う方法を説明する必要性があります。

 

Q6「看護師が言語聴覚士に対し、口腔ケアで求めることは何ですか。」

A: 言語聴覚士には、看護師や患者・家族に口腔が乾燥していては、摂食嚥下リハビリテーションに差し支えるということの説明と指導をしていただき、言語聴覚士 が来たときには、すぐに訓練ができるようにしたいと話していただきたいと思います。数少ない言語聴覚士の方を本来業務ができるようにすることが大切です。 言語聴覚士にいつも口腔ケアをしていただくことは、本来業務ではなく、申し訳なく思っております。

 

Q7「認知症の患者さんの口腔ケアのコツがあれば教えてください。(嫌がる・怒る・噛みつく)」

A:嫌がる・怒る・噛みつく場合は、歯科疾患があり、痛くて触ってほしくない場合もあります。また、不快な口腔ケアの場合もあります。歯科に相談するとともに気持ちが良い口腔ケアを提供してください。

『ナーシングトゥデイ200910月号臨時増刊号』を参考にしてください。

 

 

安彦善裕先生からの回答

 

Q1「口腔乾燥の患者さんがガーゼマスクをしているところを今でも時々見かけますが効果はあるのでしょうか」 

 A唾液の蒸発を少しでも抑える効果はあるのかもしれませんが、もともと唾液が少なくなっている状態ではそれほど大きな効果があるとは思えません。

 

Q2「痰の多い方で口腔内が乾燥している場合、痰と唾液の見分け方があれば教えてほしいです」

A唾 液は泡状になっていると無色透明に近い痰と見分けるのが難しいことがありますが、痰の多い方では、通常炎症があることが多いので、その程度によって 白色から黄色、緑色などの色のついていることがあると思います。このようは色の違いから見分けることが可能ではないでしょうか。

 

Q3―① 「精神障害と咬合について、薬を出すことがありますが、スプリントを入れる場合もありますよね。(そうすることによって症状が軽減することがあることもわ かります)スプリントをいれるための患者さんへの説明の仕方を知りたいです。(なぜスプリントを使用する必要があるのか)」

A精神障害によって食いしばりや歯ぎしりの強い方が多くみられます。また、うつ病などの精神障害によって抗うつ薬を飲んでいる人は、その副作用で歯ぎしりの出現している人もいます。特に、抗うつ薬のSSRIではその服用者の約50%に副作用として歯ぎしりが出現し、一旦出現すると長引くとの報告があります。このようなことを説明して、スプリントを装着して頂いては如何でしょうか。

 

Q3-②「精神的な部分も患者さんに説明できる場合とできない場合があるとおもいますが・・・」

A痛みの不定愁訴では、「痛みというのは、痛いところ(例えば舌とか歯)で感じているのではなくて、あくまで脳の中で感じています。原因はわかりませんが、脳の中に痛いという信号が残ってしまっているのだと思います。」のような説明をすることもあります。

実際、歯科心身症は必ずしも心因性、心理的な背景が症状の発現に関与しているとも言い切れない場合も多くみられます。

 

 


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